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2026.02.01
こんにちは。大府うららクリニック皮膚科担当の奥村真央です。
皮膚科の医療情報についてのブログの1つ目が、非常に稀な病気の話題で大変恐縮です💦
もっと数の多い皮膚疾患や、美容のことについても、書きたいことはたくさんあるのですが、やっぱり最初はコレかなと・・専門的な部分は読み飛ばしつつ、気楽に読んでいただけたらと思います。
皮膚腫瘍に長く携わってこられた大先輩の先生方から見れば、まだまだ経験も浅く、語るには不十分な立場ではありますが、これまでの皮膚科医としての人生の中で、とても強く心に残っている病気であるため、最初にご紹介させていただくことにしました🌸
インスタグラムでは、もう少し簡単に説明していきますので、見やすい方で是非ご覧くださいね。
さて、「メラノーマについて」などと書き始めると、本来はとても大きな分量になってしまいますので、今回はその中でも、日本人の方に特に多いタイプの病変について、ほんの一部だけ書いてみたいと思います。
★悪性黒色腫(メラノーマ)とは
悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ、melanoma)は、皮膚や粘膜に存在するメラノサイト(色素細胞)から発生する悪性腫瘍です。
日本人では発症率が高いがんではありませんが、進行が早く、転移しやすい皮膚がんのひとつです。一方で、早期に発見し、適切な外科的治療を行うことができれば、長期生存が期待できるということも、多くの研究から分かっています。
★日本人に多いメラノーマの特徴
欧米では、メラノーマは体幹や四肢の露光部に多く、紫外線が主なリスク因子とされています。しかし、日本人を含むアジア人では、少し違った特徴があります。
日本人では、足の裏、手のひら、指先~爪といった紫外線とは関係の少ない四肢の末端に発生するメラノーマの割合が多いです。これらは acral melanoma(AM) やacral lentiginous melanoma(ALM) と分類され、予防が難しく発見が遅れやすいという特徴があります。
★症状は?
メラノーマを疑う際の目安として、国際的に知られているのが ABCDEルールです。
A. 形が左右非対称(asymmetry)、B. 境界が不整(border)、C. 色調がまだら(color)、D. 6mm以上の大きさ(diameter)、E. 急激な変化がある(evolution)の複数に当てはまる場合には、皮膚生検を考慮するというシンプルで分かりやすい指標です。
ただし、手のひら・足の裏・爪などの末端部では、これとは異なる見方も必要です。その際に役立つのが、皮膚科で行うダーモスコピーという検査です。
以下は少し専門的な話になるので、読み飛ばしていただいても構いませんが、手のひらや足の裏では、汗腺の開口部を含む皮丘(ridge)に沿って色素が分布するparallel ridge pattern(PRP) という所見が重要とされています。
日本で行われた色素病変712か所を対象とした多施設研究では、PRPの特異度が約99%と報告されました。つまり、PRPが認められた場合には、強くメラノーマを疑うべき所見ですが、まれに良性病変でも見られることがあります。そのため、あくまで診断の補助として用い、確定診断は病理組織検査で行います。
⭐セルフチェックでは、
・足の裏に、にじむように広がるシミ
・爪の黒い線が徐々に太くなり、根元が太い三角形になる
・爪の周囲まで色が広がる
・治らない血豆 などが気にしていただく所見です。
★鑑別疾患は?
メラノーマは、良性のホクロ(色素性母斑)、イボ(脂漏性角化症)、爪の血豆(爪下血腫)、色素沈着、基底細胞癌などと見た目がよく似ていることがあります。
肉眼だけでの判断は難しい場合も多く、ダーモスコピーや皮膚生検で鑑別します。特に足の裏や手のひらでは、検査の方法にも専門的な配慮が必要です。
★最近の話題のひとつ、AI診断ツールについて
最近では、皮膚の写真やダーモスコピー画像をAIが解析して診断を補助する研究も進んでいます。
欧米で行われた前向き研究では、AIが医師の判断を補助するツールとして有用である可能性が示されています。
ただし、現状AIだけで確定診断を行うことはできず、最終的な診断は皮膚科医の診察と病理検査が必要です。
また、日本人に多い末端型メラノーマにどこまで一般化できるかという課題も残っています。
★予防と早期発見について
メラノーマは、ほとんどが体の表面の見える部位に出来るため、見た目の変化を誰でも気づき得ます。オーストラリアの競泳選手の背中の色素斑について中継を見た視聴者が指摘したのをきっかけに受診し早期のメラノーマが見つかったという話もありました。
日本人に多い末端型メラノーマは、紫外線との関連が少なく、一次予防が難しい病気です。また、皮膚がん検診は一般に行われておらず、二次予防の機会も限られています。
とはいえ、テレビ特集の後などは不安で受診される方が増えることはありますが、ほとんどが良性です。非常に稀ながんですので、過度に怯える必要はありませんが、見た目の変化に気づくことの重要性は感じています。
「ほくろが変わった気がする」など気になることがあれば、気軽に皮膚科にご相談していただけたらと思います。
医学のことを書くとどうしても硬い文章になりがちですが、ここまで見ていただきありがとうございました。参考文献も以下に記載します。
Saida T, et al. Journal of the American Academy of Dermatology, 2004
Koga H, et al. Dermatology, 2011
Nakamura Y, et al. Pigment Cell & Melanoma Research, 2013
Nadelmann ER, et al. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology, 2025
皮膚がん診療ガイドライン第4版 メラノーマ診療ガイドライン2025
Marchetti MA, et al. npj Digital Medicine, 2023